炭酸は飲めない
量産型のフラペチーノだって良し悪しがある。作り手によっては氷の大きさがばらついていることもあるから、最後に味のない氷だけがジャリジャリ残るときもあるし、逆にムラなく完成されたものは最後まで均一な味を楽しむことができる。そんな話をしたら彼女は興味なさそうにあくびをした。
「飲めればよくない?」
「私は嫌だよ」
「だーって、誰もそんなの気にしてないよ。かわいいアイテムの一つとしか思ってないでしょ。美味しそうー!ってはしゃいで買って盛れてる自撮り撮るだけだよ」
「少なくとも私は違うもん」
「へぇ」
彼女がペットボトルのコーラを開ける。プシュ、と小気味いい音がした。ペットボトルはフラペチーノより安くて均一だ。高く金を払っているのにクオリティにばらつきがあるのは納得がいかない。でも彼女が言ったようにそんなことを気にする人間なんてほとんどいないんだろう。自分が変わり者なのはわかっている。
「それなら買わなきゃいいのに」
「それは、そうだけど」
「まぁでも、わからなくはないかな」
甘ったるい匂いが鼻をつく。顔をしかめると彼女はへらりと笑って、一口だけ飲んだコーラを私に押し付けた。
「あげる」
「いらない」
「均一も不均等も嫌なんでしょ。これなら文句言えないじゃん」
開封されたペットボトル、一口だけ減ったコーラ。目をぱちくりさせている私に彼女は声を上げて笑い、私のカバンにそれを押し込んだ。
「早く行かないと席取られるよ」
先を行く彼女の背が少し小さくなってから、ようやく私は彼女を追いかけた。隣を似たような服を着て似たようなメイクをした誰か同士が歩いていく。
いつだか書いた話のリメイクでした。特に意味もないし、内容はフィクションです。