游々自敵

中身のない話と虚無

私はそれでも腹を切り身を削る

昨日、10冊目の本を出したので同人作家をやめた。

 

やめたという表現はあまり正確ではなくて、実際にはこの先もたぶん私は本を出すし本を売る。でも私はとりあえずここで自分に一区切りをつけたくて、「やめる」と宣言した。

同人作家がなんだかよく分からない人はそのまま一生わからないままで生きていてほしいのだが(切実に)、端的に説明するならば自腹を切って本を作る頭のおかしい人のことである。こんなことを言ったら叱られるかもしれないが自腹を買って自分を追い込みながら本を出すなんて正気でできるはずがないのでみんな頭はおかしい。

 

高校三年生の春に友達と一緒に初めて本を出した。原稿は終わらないし印刷所のことはよく分からないしでてんやわんやだったがとにかく本は出た。めちゃくちゃ余ったけど2年半かけてようやく完売した。

それから何度も本を出して、昨日、ようやく10冊目。三年で10冊。早いのが遅いのか私には分からないが、少なくとも去年の9月から今年の7月までずっと本を書いていたことになるし、そもそも9月に本を出すことを決めたのは去年の6月だったから一年近くは何らかの本を書いていたことになる。頭おかしいなやっぱり。

 

本を作るのは楽しい。

 

 

なんてことはない。

締め切りに追われるのは最悪だし毎日話が書き進められるわけではない。スランプなんてザラだけど締め切りは迫ってくるから何とかして脳から捻り出さなくてはならないし、イベントが試験とかぶることが多いからいつも「死ね」と思う。

おまけに自腹でn万円印刷代に飛ばさなきゃいけないし、当日の荷物はめちゃめちゃ多い。本当にクソだ。早く辞めたい。辞めたかった。

 

本当に辞めたかった。昨日の帰り、最寄駅の一つ手前の駅に着くまでは。

イベントを終えて、打ち上げをして、おわったなー、もう辞められる!なんて思ってたのに、帰りの電車で私は泣いた。

10冊分の重みが襲ってきた。

 

同人作家はクソだ。生活はゴミみたいになるし原稿が生活の中心になる。

でもイベントで差し入れをもらった時とか、お手紙を手渡ししてもらえたときとか、感想が飛んできたときとか。めちゃくちゃ焦りながら入稿した本が届いたときとか。

本当に、あれは、楽しかったし、楽しいことだ。

 

10冊。文字で数えると30万字くらい。原稿用紙750枚分。厚さはちょっとわからないけどたぶん人を殴ったら殺せる。

私はこれだけの文章を書いた。その証明がここにある。それは、多分、本を出した人間にしかわからない感情だ。

自分の努力が明確に形になるのは。恐ろしくて、同じくらいに強烈な快感だ。

 

多分私はどうせ辞めるなんて言っておきながら近いうちに本は出すし売り始めるだろう。めちゃくちゃやりたくないけど、本当にクソみたいな趣味だと常日頃から思っているけれど、それでも私は腹を切り身を削り心血を注いで本を出す。

 

だって馬鹿だから、頭がおかしいから。このクソみたいな趣味が愛しくてたまらないのだ。